【相続の専門家が解説】軍用地の相続方法・手続きのポイント
親が軍用地を所有していれば軍用地は比較的高価なために相続でもめるのではないかとか、実際に軍用地を相続した方のなかには相続手続きや遺産分割方法について悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。
この記事では、軍用地の相続方法や相続手続きについて解説しますので参考になさってください。
軍用地の相続方法
軍用地とは、米軍や自衛隊が使用する土地のことで、沖縄県では多くの民有地が軍用地として借り上げられています。
軍用地について相続に関する法律は特に定められていないので一般的な相続と同じく、民法の規定や相続税法などが適用されます。
しかし、軍用地は米軍や自衛隊が使用する土地であるため、一般の土地とは異なる特殊な事情があります。
軍用地を相続したときに必要な手続き
たとえば、軍用地の所有者が死亡した場合は以下の手続きが必要です。
- ①相続税の申告と納付
- ②地主会への名義変更の届出
軍用地の相続は沖縄県特有の事情があり、複雑な問題が発生する可能性もあります。
そのため、相続税の申告や遺産分割などについては、軍用地の相続に詳しい司法書士や税理士・弁護士に相談することをおすすめします。
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相続税の申告と納付
軍用地も他の財産と同様に相続税の課税対象になりますので、相続税評価額を計算して、相続税の申告書を作成し、納税する必要があります。
相続税評価額の計算方法は、固定資産税評価額に所定の倍率をかけて借主の権利(地上権)にあたる部分を差し引いて求めます。
地主会への名義変更の届出
軍用地の地主は多くの場合、一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)に団体会員として所属しており、土地連を通じて国との交渉や手続きを行っています。
したがって、相続によって名義が変わった場合は、所属する地主会に届け出て、名義変更の手続きを行う必要があります。
軍用地の相続税の計算方法
一般の相続と同じように、大雑把にいえばプラスの相続財産から相続した負債をマイナスして、基礎控除額に満たなければ相続税がかかりません。
ただし、軍用地の評価額の算定は少々複雑です。
土地の相続税評価額は以下のようにして計算します。
- 固定資産税評価証明書(固定資産税納税通知書)記載の固定資産税評価額を確認する。
- 登記記録の地目に対応する「公用地の評価倍率表」から該当する倍率を探す。
- 相続税評価額=固定資産税評価額×上記の倍率×(1-40%)
ここで(1-40%)とするのは、軍用地として貸しているのでその借地権価格を控除するからです。
なお、軍用地の場合は原則として40%として計算します。
(地上権で存続期間の定めのないもの相続税法第23条)
具体的な算定例
軍用地(税務上は「公用地」とよびます)の評価倍率表から倍率を確認します。
財産評価基準書から沖縄県を選択すると沖縄県 財産評価基準書目次
のページにいきますので、「雑種地の評価(公用地用の評価倍率表を含む)」を選択します。
次に該当する土地の登記記録上の地目に対応する評価倍率をかけたものが相続税の評価額になります。
例えば、嘉手納飛行場内の土地で地目が原野、固定資産税評価額が100万円だとすると次のような計算になります。
100万円×4.1×0.6=246万円
軍用地は節税にも効果的
上記のように軍用地では相続税評価額が4割減額されます。
しかも軍用地は国が米軍や自衛隊施設として借り上げている特殊性から、一般的な土地の評価額よりも低くなっていると言われています。
一方軍用地の売買価格は、(年間借地料×係数)によって計算されるため、一般の土地取引のような(坪単価×坪数)とは異なり、年々借地料が上がっている傾向にあることから比較的高価になっています。
そのため、実際の売買価格よりも低い価格で評価される軍用地では現金を相続するよりも節税になるのです。
さらに、軍用地として貸しているので安定して賃料を得ることができるのも魅力ですね。
このように、節税対策としても有効で安定的な収益を得ることができるため、軍用地は投資対象としても注目されています。
一般的な遺産分割の方法
一般的な土地の遺産分割方法としては、以下の4つの方法があります。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割(共有相続)
現物分割
現物分割は、相続した土地を分筆して、それぞれの土地をそれぞれの相続人が所有する方法です。
この方法は、土地を個別に受け取ることができるというメリットがありますが、分筆に手間や時間がかかるというデメリットもあります。
また、土地の形状によっては不整形地になってしまうことや場所によって価値が異なることなどから、公平に分筆するのが難しいことがあります。
代償分割
代償分割は、ある特定の遺産を相続人の一人が相続するかわりに、他の相続人に相当額の現金を渡す方法です。
この方法は、土地を相続する相続人に資力が必要であり、また、土地の評価額について相続人間で争いがおこる可能性があります。
換価分割
換価分割は、相続した土地を売って代金を相続人で分ける方法です。
この方法は、相続人に資力がなくても可能であり、土地の評価額について争いがおこらないというメリットがあります。
共有分割(共有相続)
共有分割は、一筆の土地を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。
この方法は、分筆や売却の手間がなく、相続人に資力がなくても可能であるというメリットがあります。
ただし、共有状態だと管理や処分をするために他の共有者の同意が必要なことなどから、後日の紛争の種になってしまうおそれもあります。
軍用地の遺産分割の特色
一般的な遺産分割では難しい場合があるのですが、軍用地の場合は比較的に分割しやすいといえます。
特に軍用地特有のメリットがある2つの分割方法についてみてみましょう。
現物分割の場合
軍用地の場合分筆によって価値に差が生じにくい特色があります。
一般の土地であれば不整形地になることなどから価値の差が生じるところが現物分割のデメリットでしたが、軍用地の場合借地料収入が所有する利益になるため、所有者が直接利用したり売却したりすることを想定していないので、デメリットにはならないのです。
具体的には、軍用地はそのエリア一帯を軍用地として借り上げているので、一つ一つの土地の形状や広さは借地料に影響しません。
一般の土地では例えば10㎡の三角地で利用価値がない土地であっても軍用地では面積に応じて借地料を受け取ることができます。
なお、現物分割をするためには、現地の測量が必要だったり分筆費用が必要だったりするデメリットがあります。
軍用地相続の場合共有分割が利用できる
軍用地の場合には、相続した土地を実際に利用することが目的ではなく、借地料収入を得ることが目的になります。
共有名義で相続しても実質的には借地料を受け取る権利の分割になるため、一般の共有分割のような後日の管理や処分の心配がありません。
この意味ではわざわざ実際に分筆する意味はあまりないといえます。
一般の土地では後日の紛争のおそれがある共有分割ですが、借地料を受け取る権利が目的になる軍用地の相続の場合には有効な方法になるでしょう。
なお、共有分割で相続した場合は相続した持分に応じて借地料を分配します。
例えば、兄弟2人で2分の1ずつの割合で相続したときには、100万円の賃料であれば50万円ずつ受け取ることになります。
まとめ
この記事では、軍用地の相続方法や相続手続きについて解説しました。
軍用地としての特色から一般的な相続と異なり比較的に遺産分割をしやすいのは事実ですが、一方では売買価格が高額で借地料を得られる優良資産だからこそ紛争のもとになる可能性も高いといえます。
また、相続割合を決める際には「特別受益」「寄与分」など複雑な問題を含んでいる場合もあります。
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