沖縄の相続「トートーメー」のルールと注意点を解説!
目次
沖縄の相続「トートーメー」のルールと注意点を解説!
近年では、マスコミなどで「終活」に関する話題がとりあげられるようになり、終活に関心を持たれる方が増えているようです。
終活とは、自分が亡くなった後に家族に迷惑をかけないように生前に終末期に関する問題や望みを整理しておくことも含まれます。
自分の死後、家族間での「争続」は避けてほしいものです。
この記事では、自分が亡くなった後の相続で紛争を予防するために、特に沖縄独自の特色であるトートーメー承継ルールをふまえて解説します。
沖縄の相続のご相談なら、沖縄最大級の相続専門事務所 司法書士法人ロアックへ
お電話でのお問い合わせ>>0120-889-309
トートーメーとは
トートーメーは、沖縄における先祖代々の位牌のことで、ご先祖様を祀る祖霊信仰のシンボルです。
トートーメーの信仰では、亡くなったご先祖様が家の守り神となり、子孫を守るとされています。
トートーメーはお仏壇の中心に置かれ、毎月旧暦の1日と15日、または毎朝お茶を供え、手を合わせる習慣があります。
トートーメーはまた、位牌だけでなく、墳墓、系譜、祭具等も含んだ意味で用いられることもあり、さらにこのような祭祀財産だけでなく、一般的な相続財産までを含む概念で用いられることもあります。
トートーメーの扱いは地域によって違いがありますが、ここでは特長的なものを取り上げています。
トートーメーの承継ルール
トートーメーの承継は原則として長男がするものとされ一般財産の相続権も含むものとされており、長男が相続できないときには以下の4つのタブーをさけて相続するものとされています。
- タチーマジクイ(他系混合)
父系と異なる男子を承継人としない
- チャッチウシクミ(長男押込み)
長男を排除して次男以下の承継をしない
- チョーデーカバサイ(兄弟重ね合わせ)
兄弟のトートーメーを同じ家(仏壇)に並べて安置しない
- イナグガンス(女元祖)
女性の承継を認めない
トートーメーの由来
トートーメーの由来は、沖縄の位牌を指す言葉で、「尊い方」を意味する「尊御前(トートーメー)」から来ているとされています。
また、「お月様」を指す言葉としても使われており、古くは月も祖先の位牌も尊い存在として同じ呼び名であったようです。
歴史的には、トートーメー(位牌)を通じて先祖供養する風習は15~16世紀から始まり、中国の影響を受けていると考えられています。
最初は首里・那覇の士族階級がトートーメーを作り始め、その後庶民にも広がったとされています。
沖縄の門中制度
沖縄では、トートーメー承継の話題となると「門中」も関連して考慮しなければなりません。
門中は親族組織、相続問題に深く関係しているからです。
沖縄の門中制度は、始祖を同じくする父系の血縁集団を指し、「ムンチュー」とも呼ばれます。
この制度は、17世紀後半に士族の家譜編纂を機に沖縄本島中南部を中心に発達し、その後本島北部や離島にも拡がりました。
門中の特長は以下の通りです。
- 父系血縁
門中は父系の直系血族が一族の長として継承していくのが伝統です。
- 系図
門中に属する男性は、門中系図を通じて自分のルーツを知ることができます。
- 結束力
門中同士の結束力は非常に強く、共同でお墓を持ち、奨学金を出し合ったり、託児所を作ったりすることもあります。
- 法的位置づけ
一般社団法人として法人格を取得している門柱、権利能力なき社団としての門柱、個人法的レベルの家族的な門柱などの態様がみられます。
民法法人や権利能力なき社団としての態様を備えた門中では墳墓や土地建物の不動産、預金などは門中の財産となり代表者個人の相続とは切り離されて考えられますが、個人法的レベルの家族的な門柱であれば「個人の財産の相続」となるため現行民法との適応が問題になることもあるでしょう。
民法による承継ルール
現行民法では、男女の別や生まれの先後による区別はなく、平等に相続することが定められています。
現行民法による相続ルールを確認してみましょう。
相続に関するルール
日本の相続に関するルールは、主に民法によって定められています。
以下は、相続に関連するいくつかの基本的なルールです。
- 相続人の範囲と順位
配偶者は常に相続人となります。
子供がいる場合、子も相続人となり、子がいなければ、直系尊属(親や祖父母など)や兄弟姉妹が相続人となります。
- 相続分(相続割合)
法定相続分は、被相続人との関係に応じて異なります。
例えば、配偶者と子がいる場合、配偶者と子はそれぞれ1/2を相続します。
- 遺言による指定
被相続人が遺言で相続人や相続分を指定している場合、その指定が優先されます。
- 遺産分割協議
遺言がない場合、相続人同士で遺産分割協議を行い、財産を分割します。
協議がまとまらない場合は、裁判所で調停や審判を行います。
- 特別受益と寄与分
特別受益は、被相続人から生前に受けた贈与や遺贈のことで、相続できる財産に影響を与えます。
寄与分は、相続財産の維持や増加に貢献した相続人などに認められるもので、相続できる財産が増える場合があります。
- 相続財産の管理
相続開始後から遺産分割完了まで、相続財産の保存に関する制度があります。
利害関係人は家庭裁判所に相続財産の管理人選任などを申し立てることができます。
- 相続放棄
相続人が相続を放棄する場合、相続放棄の手続きを行う必要があります。
放棄をすると、その人は相続人ではなくなり、相続財産に対する権利を失います。
2023年4月の相続法改正により、いくつかの変更が加えられています。
改正点には、遺産分割の期限設定や、相続財産の管理に関する制度の変更などが含まれています。
祭祀承継の特別なルール
一方で、祭祀については特別なルールが定められていて主に民法第897条によることになります。
系譜、祭具、及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。
ただし、被相続人が指定している場合は、その指定に従って祭祀を主宰すべき者が承継することになります。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 祭祀承継者は、一族のお墓などの祭祀財産を引き継ぎ、祖先の祭祀を主宰する人を指します。
- 祭祀承継者は、通常は相続人の中から選ばれますが、必ずしも相続人である必要はありません。
- 祭祀承継者は、被相続人の指定、慣習、または家庭裁判所によって決定されます。
- 祭祀財産は相続財産に含まれず、相続放棄をしても祭祀承継者になることができます。
- 祭祀承継者は、祭祀の方針を決定する権利を持ち、必要に応じて祭祀財産を処分することもできます。
家督相続による相続
家督相続とは、明治31年から昭和22年まで施行されていた旧民法における遺産相続の方法です。
この制度では、戸主(家長)が隠居や死亡した際、長男がすべての財産・権利を相続するというものでした。
しかし、現在において、家督相続が相続制度として適用されることは基本的にありません。
ただし、昭和22年5月2日までに開始した相続については、家督相続制度が適用される場合があります。
例えば、長年相続登記がされていない土地を登記する際に、最後に登記された所有者の相続が発生した日が昭和22年5月2日より前であれば、家督相続を適用して登記することになります。
一方占領下にあった沖縄では昭和32年1月1日までは旧民法により戸籍が編成されており、アメリカから日本の施政権が返還された昭和47年5月15日以降正式に日本国憲法の規定が実効性をもつことになります。
紛争の予防のためにしておくこと
沖縄ではトートーメーや門中の慣習が強く根付いているため、現行民法による相続関係の調整が難しくなることもあります。
そこで、生前に紛争を予防しておくことも考慮しておきたいものです。
生前の準備
紛争を予防するためには、ご本人は誰に何を承継させたいと希望するのかを明確にして、相続人となる方たちに理解してもらうようにつとめなければなりません。
そのために次のような事項を検討してみてください。
- 財産目録の作成
自分の財産を明確にし、資産と負債をリストアップします。
これにより、相続人が遺産を理解しやすくなります。
- 遺言書の作成
自分の意思を法的に有効な形で残すために遺言書を作成します。
これにより、自分の意向に沿った財産の分配が可能になります。
- 家族会議の開催
家族間でのコミュニケーションを図り、相続に関する意向を共有します。
これにより、家族間の理解と合意を促進します。
遺言により承継者を指定できる
遺言によって被相続人は承継者を指定することができます。
これにはいくつかのポイントがあります。
- 遺言の効力
遺言で指定された承継者は、遺言の効力が発生するときに、指定された財産を承継します。
- 祭祀承継者の指定
特に、祭祀(先祖の供養や墓の管理など)に関しては、遺言で祭祀承継者を指定することができます。
これにより、遺言者の意思に基づいて、祭祀に関わる財産の承継が行われます。
- 相続人以外の指定
遺言者は、相続人だけでなく親族以外の第三者を承継者として指定することも可能です。
- 遺言書の記載方法
遺言書には、承継者として指定される人の氏名や関係、承継される財産の詳細を明記する必要があります。
これにより、遺言の内容が明確になり、承継者の権利が保護されます。
遺言による承継者の指定は、遺言者の意思を反映させる重要な手段です。
遺言書は遺言者の死後に効力を発揮するため、遺言書を適切に保管することも重要です。
遺言によっても遺留分は保護される
遺留分とは、特定の相続人が法律によって保障された最低限の相続分のことを指します。
遺言があっても、この遺留分は侵害することができません。
遺留分は、配偶者、子ども、および直系尊属(親など)に認められています。
遺言によって遺産の分配を決定した場合でも、遺留分権利者の権利は保護されるため、遺留分を侵害する内容の遺言は、遺留分侵害額請求権によって修正される可能性があります。
つまり、遺留分権利者は、自分の遺留分が侵害されたと感じた場合、遺留分侵害額請求を行い、法律で定められた遺留分を確保することができます。
遺留分の具体的な割合は、法定相続分の半分です。
例えば、配偶者と子どもがいる場合、配偶者の遺留分は法定相続分の1/2の半分なので1/4が遺留分として認められます。
遺留分の保護は、相続人間の公平を保つための重要な仕組みです。
遺言書を作成する際には、遺留分に配慮することが必要ですし、遺留分侵害額請求権に関する理解も重要になります。
まとめ
家督相続制度やトートーメー承継ルール等による慣習が強く残っている地域性や世代間のギャップ、それらの制度やルールによることで利益を享受する方とそうでない方との利益関係によって相続が紛争となってしまうこともあります。
もとより、被相続人としては相続した家族が紛争することを望まれてはいないでしょう。
そのためには、生前に紛争を避けるための方策を整えておかれることをおすすめします。
遺言書の作成などは有効な方法ですが、遺言書の作成には法的な知識が必要なため専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
生前に相続での紛争をさける方法を検討している方、相続後に問題を整理したいと考えている方など、相続に関して悩みや不安がある方は私どもに気軽に相談してください。
沖縄相続遺言相談所は長く沖縄で活動しており、トートーメーの相続ルールもよく理解したうえで相続問題の予防などにとりくんでいます。
無料相談実施中
沖縄相続遺言相談所では相続の無料相談を実施しております。
お電話でのお問い合わせはこちら>>0120-889-309